国立公園内で焚火ってできるの?
キャンプ場以外のところでキャンプをしてもいいの?
支笏湖もそうですが国立公園にはやってはいけないという決まりと、
それを含む大きなミッションがあることをご存じでしょうか?
今回はちょっと勉強チックにそんなお話。
まず初めに国立公園のミッションの部分。
環境省のHP、国立公園の話の始まりは
「国立公園は、次の世代も、私たちと同じ感動を味わい楽しむことができるよう、優れた自然を守り、後世に伝えていくところです。」
という文言から始まります。
そこには「景観・生物多様性の保護」という国立公園のイメージ通りの目的と同時に、利用という部分もしっかり明記されています。
具体的には
「国立公園は、自然についての知識を深めたり、健康増進やレクリエーションのために自然と触れ合う所でもあります。登山・ハイキング・スキー・キャンプ・カヌー・シュノーケリング・バードウォッチング・自然観察など自然とのふれあい方も多様です。こうしたアクティビティを多くの人に楽しんでいただけるようにビジターセンターや歩道・案内看板等の施設の整備を始め、自然観察会なども開催しております。」
と記載。
これまでは「規制・規制」と進めてきた日本の国立公園ですが新しい時代は
「利用をし、基本となる知識・技術・意識を植え付けないと本当の意味での保護はできない」という認識の中で環境省が動いています。
さてここで「じゃあなんでも使っていいのか?」というお話。
まずは支笏洞爺国立公園内の区域図支笏湖地域のみをピックアップし、色別に分けたものです。
大きく分けて3種類。
「樽前山山頂・オコタンペ湖周辺」の特別保護地区。
「支笏湖畔・樽前山山麓・オコタンペ湖周辺等々」の特別地区。
それをとりまく普通地区。
【特別保護地区について】
特別保護地区とは「公園内で特にすぐれた自然景観、
原始状態を保持している地区で、最も厳しい行為規制が必要な地区」
と定義されています。
具体的には
- 木竹の損傷
- 木竹の植栽
- 動物の放牧(家畜の放牧を含む)
- 屋外での物の集積・貯蔵
- 火入れ・たき火
- 植物の採取・損傷、落葉・落枝の採取
- 植物の植栽等
- 動物の捕獲・殺傷、卵の採取、損傷
- 道路及び広場以外での車馬・動力船の使用、航空機の着陸
物をひろって集めてはいけない、持って帰ってもいけない。植物や卵を採取してはいけない。そして焚火をしてはいけない。
続いて特別地区
第一種から第三種までありますが、
一種の定義としては「特別保護地区に準ずる地域で、現在の景観を極力維持する必要のある地域」とされ
- 工作物(建築物、車道等)の新築、改築、増築
- 木竹の伐採
- 指定区域内における木竹の損傷
- 鉱物の掘採・土石の採取
- 河川・湖沼等の水位・水量の増減
- 指定湖沼・湿原等への汚水・廃水の排出
- 広告物等の設置・掲出・表示
- 屋外での土石その他指定物の集積・貯蔵
- 水面の埋立・干拓
- 土地の開墾・形状変更
- 指定高山植物等の採取・損傷
- 指定した植物の損傷等
- 指定動物の捕獲・殺傷、卵の採取、損傷
- 指定区域内における指定動物の放出(家畜の放牧を含む)
- 屋根・壁面・鉄塔等の色彩の変更
- 指定湿原等への立入り
- 指定区域内における車馬・動力船の使用、航空機の着陸
- 工作物(建築物、車道等)の新築、改築、増築
- 木竹の伐採
- 指定区域内における木竹の損傷
- 鉱物の掘採・土石の採取
- 河川・湖沼等の水位・水量の増減
- 指定湖沼・湿原等への汚水・廃水の排出
- 広告物等の設置・掲出・表示
- 屋外での土石その他指定物の集積・貯蔵
- 水面の埋立・干拓
- 土地の開墾・形状変更
- 指定高山植物等の採取・損傷
- 指定した植物の損傷等
- 指定動物の捕獲・殺傷、卵の採取、損傷
- 指定区域内における指定動物の放出(家畜の放牧を含む)
- 屋根・壁面・鉄塔等の色彩の変更
- 指定湿原等への立入り
- 指定区域内における車馬・動力船の使用、航空機の着陸
【結論1】
特別保護地区では「火入れ・焚火」というキーワードが禁止事項に入っているのに対し、特別区の中では禁止とはされていません。
焚火台を使い地面へのインパクトは最小限にとどめるということ、痕跡を残さないということ、野火の危険が高い場所では行わないこと、炎の大きさは最小限でとどめること、火を消すときは完全に熱が消えたことを確認し立ち去ること、など諸々の焚火に関する配慮が必要ですが禁止という規定は特別保護地域以外にはありません。
【結論2】
特別地区に書かれている「工作物の新築」というのは「テント・タープ・ハンモック・テーブル・イス」を建てることも含まれます。
国立公園内では景観というものや開発に制限がかかっており、これがないと一時的な許可を取り、様々な所に様々な建物が建つこととなります。
といったところから特別区では一般的なテント等を利用したキャンプは禁止という認識になります。
さて、以上の禁止項目に配慮するとそれ以外のことは基本的には行うことができます。
その一例が、今回のツアーとなった
「カヌーで湖畔を進み、夕方になったら陸で休憩。焚火台を使用し、小さく焚火をし、工作物を建てずに朝まで過ごす。」というビバーク的なカヌー。
「そっか!!!じゃあ私も!!」と思う方はちょっとSTOP。
支笏湖の様々な恐ろしさを知っていますか?
・ヒグマ多き森
・年間通じて非常に低い水温
・日本2番目に深い湖のただならぬうねりの大きさ
・1000mを超える山々からの吹きおろしの強風
・湖畔に道路がない場所があり、エスケープ不可な場所があること。
・動力船規制があり一般のジェットスキー・エンジンボート等が水上におらずレスキューにかなりの時間がかかる
そんなことから支笏湖は国内の湖でも指折りのリスク高き湖であり、
ちょっとチャレンジしようというレベルではやめたほうがいいフィールドです。
カヌーは最悪少し歩けば陸へエスケープできる道路がある場所で乗り、夜を過ごすのはやはりキャンプ場を利用することがリスクを減らすこととなります。
■最後に
「規制と無法化」から「適正利用と保全」へ
我々は国立公園の今までの移り変わりをしっかり認識し、これからの在り方を環境省と共に考えていきたいと思っています。
そこには昭和・平成と進んできた日本の国立公園の「規制・禁止・制限」といった法律と、それに反し行われてきたたくさんの法令違反の無法地帯化といった流れがあります。
ここからは海外の例をたくさん参考にしながら、北海道民は特に大きな自然の中で生かされているという感覚やエゾシカ、ヒグマが暮らす森の横で普段から生活をしているということを認識し、野外活動の基本を当たり前のように感じれる社会づくりを行うことで自然と自然保護意識が向上する世界を作っていけたらと考えます。
たばこや空き缶のポイ捨てが減りました。
今ではそんな行動がかっこ悪いとさえ思われる時代です。
社会は変化します。
そしてこれからはさらに変化の大きな時代に突入します。
教育分野での学習指導要領にも「自然」や「社会性」「探求心」「現実の世界」といった言葉が飛び交います。
「入るな!!やるな!!ではない自然との向き合い方が必要とされています」
それもこれからの時代がAIやITといった仮想時代に突入することを危惧していることからきていることでしょう。
技術が進歩するのと真逆に必要性の高さをうたわれる「自然の中での活動。
保護するために利用できる環境。
利用するために学べる環境。
「それは禁止だ!!」では
本質をとらえていないと思います。
「国や市といった行政」と「アウトドアガイドや域などの民間」が協働型管理運営という形でそれぞれの役割を実行し、保護と利用のバランスの取れた国立公園地域を作れるようこれからも動いていきたいと思っています。